「増税」
この言葉を聞くと、ほとんどの人はイライラムカムカするでしょう。
それはそうですよね。
自分には何のメリットもないのに取られるお金だけ増えるんですから。
何もメリットなんかありません。
いつもはマーケティングのコラムばかりでしたが、今回は少し身近な「増税」をテーマに、マーケット視点も踏まえてお話ししたいと思います。
まず税金とは?どんな種類があるの?
国が徴収する「国税」
所得税、法人税、相続税、贈与税、消費税、酒税、たばこ税、自動車重量税などがあります。
自治体が徴収する「地方税」
住民税、事業税、固定資産税、地方消費税、自動車税などがあります。
所得税や法人税は、個人や企業の所得や利益に対して課され、一方の消費税は消費者の購入行動に対して課されます。
また、たばこ税や酒税などの特定の製品に対する税金も増税の対象となることがあります。
税金って一体何に使っているの?
税金の使用目的の「タテマエ」は以下のとおりです。
税金の使用目的は、主に公的サービスや社会保障制度の資金確保。
高齢化社会においては年金や医療、介護などの社会保障費が膨大になり、それを支えるための税収が必要となります。
また、公共事業のための資金も必要で、税金によりこの資金が確保されます。
もう一つの重要な目的は、財政健全化です。
政府の借金が増えすぎると国の信用が失われ、経済全体に悪影響を及ぼす可能性があります。
そのため、税収を安定的に確保し、財政の健全性を保つことが求められています。
さらに、消費税には納税の公平性を保つという側面もあります。
消費税は購入者全員が等しく負担するため、税負担が広く分散されるという特徴があります。したがって、税収の安定確保と負担の公平な分担が見込まれる点がメリットといえるでしょう。
さあ、ここまでがタテマエです。
反論してみましょうか。
・日本の社会保障なんて全く充実していないでしょ?介護職の人たちの給金が低いのはなぜ?
・政府の借金って何のためにしているの?意味のない防衛費?日本より裕福な国へのバラマキ?はたまた政治家のご飯代?
・消費税は公平じゃないですよね。年収1,000万円の人も、100万円の人も税率が一緒なんだから。
このように不平を挙げてみると、結果「企業がやっている決算報告を国がやっていない」ことに原因があります。
国が「この税金は〇〇に使っています」と明示すれば、私たちはみんな納得できますもんね。
あ、それ明示されてますよと思った方、よく確認してみてください。
財務省の「国のお金の使い道」というページがあります。
ここに「令和5年度決算概要(PDF:145KB)」がありますが、これだけ国民に負担を強いておきながら、たったの2ページのPDFで何を納得しろというのでしょうか。
これをみて、税金払います!なんて思う人は一人もいません。
日本国憲法で定められている以下の内容を、ただ形式的になぞっているに過ぎないのです。
憲法第83条(財政民主主義の原則): 国の財政を議会の議決に基づいて行うことを定めています。
憲法第91条(財政状況の報告義務): 政府は、国の収入支出の決算を毎年会計検査院の検査を経て国会に提出し、その審査を受けなければなりません。
財政法第46条(決算の国会提出): 内閣は、会計年度ごとに決算を調製し、次の年度開会の国会に提出しなければなりません。
財政法第28条(予算の公表): 内閣は、予算が国会で成立したときは、直ちにこれを公表しなければなりません。
ではなぜ増税する?増税のメリットとは?
増税のメリット。こんなタテマエは聞きたくありません。
上記の社会保障・財政健全化・納税の公平性をさらに充実させるということになりますが、過去の増税からも一度も改善されたという実感が私たちにないからです。
では、増税のデメリットをまとめます
1.家計への負担増加
増税が実施されると、まず直接的に感じられるのは家計への負担増加です。
所得税や消費税が上がることで、日常生活での支出が増えます。たとえば、食品や日用品の値上げが顕著になり、これまで以上に家庭の財布に対する圧力が増します。
2.消費の減退
増税は消費の減退を引き起こすことがあります。
特に消費税の増税は、商品やサービスの価格が上がるため、消費者の購買意欲が低下します。
消費が減ると、企業の売上が減り、経済全体に悪影響を及ぼすことが考えられます。
増税前に買うべきものを検討する家庭も増え、増税後は消費が急激に減少する傾向が見られます。
3.企業活動への影響
企業側にも増税は大きな影響を与えます。所得税や法人税の増税により、企業の利益が圧縮されます。
また消費の減少により売上も減少し、特に中小企業には深刻な打撃となります。
さらに、増税に伴うコスト負担が増えると、企業は価格転嫁や人件費削減などを行わざるを得ないケースも出てきます。
これらの影響により、企業活動が停滞し、結果的に経済全体にも悪影響を及ぼす可能性があります。
…まあそうですよね。改めて形式的に並べてみましたが、そんなことはわかりきっています。
過去の増税事例
日本の増税事例
日本における増税の事例として最も注目を浴びたのは、消費税の導入とその後の段階的な引き上げです。
1989年に3%で導入された消費税は、その後1997年に5%、2014年に8%、2019年には10%に引き上げられました。
この増税の目的は、社会保障制度の安定化と税収の確保です。
しかし、消費税の増税は一般消費者に直接的な負担を強いるため、デメリットとして消費の減退や家計への負担増加が指摘されています。
他にも、法人税やたばこ税の増税が実施されています。
これらの増税が企業活動や個人の所得にどのような影響を与えるか注視されています。
過去には復興特別所得税も導入されており、東日本大震災からの復興資金を確保するための措置として実施されました。
この復興税ならまだ納得できます。人々の役にたつと納得できる名目があれば、自分の家計が苦しくなっても「仕方ない」と思えますもんね。
海外の増税事例
日本以外でも多くの国で増税が行われており、それぞれの国で異なる影響が見られます。例えば、アメリカでは1980年代にレーガン政権下で大規模な所得税減税が行われましたが、財政赤字の拡大を受けて1990年代にはクリントン政権が増税を実施。これにより財政赤字の減少が見られましたが、一方で経済成長に対する影響も議論されました。
ヨーロッパでは、ギリシャが財政危機に陥った際、EUの援助を受ける条件としてさまざまな増税措置が講じられました。これにより税収の確保が進んだものの、家計への負担が増大し、消費の減退や経済活動の低迷が顕著に現れました。
さらに最近では、イギリスにおける「スーパーマーケット税」の導入が例として挙げられます。この増税は公共サービスの資金確保を目的としており、特定の商品に対する課税強化が行われました。これにより国全体の税収は増加しましたが、特定の業界には大きな影響を与え、企業活動に対する懸念も生じています。
これらの海外事例からも分かるように、増税がもたらすメリットは税収の確保や社会保障の安定化に寄与する一方で、デメリットとしては消費の減退や企業活動への影響が避けられないことが多いです。
増税に対する諸説
増税賛成意見(賛成する人ってどんな人なんでしょうかね)
増税に賛成する人々は、まず社会保障制度の安定化を挙げます。
国や地方自治体が提供する医療や年金などの公的サービスは、多くの市民にとって欠かせないものです。
これらのサービスを維持し、さらには充実させるためには、安定した税収が必要となります。
また、増税が公共事業の財源を確保する手段として見なされることもあり、これによって雇用の増加や経済の活性化を期待する意見もあります。
さらに、税収が安定することによって国の債務を減少させ、長期的な経済の持続可能性を高める効果も期待されています。
増税反対意見
一方で、増税に反対する人々は、主に家計への負担増加を懸念しています。
増税は、一般消費者に直接的な経済的影響を与えます。
これにより消費が低迷し、経済全体の成長が阻害される可能性が指摘されています。
また、企業にとっても増税はコスト増となり、その結果、雇用や投資が抑制される可能性があります。このようなデメリットを重視する反対意見として、過去の増税事例を引き合いに出し、その影響が否定的であったことを根拠にすることが多いのです。
例えば、消費税の引き上げ前に「増税前に買うべきもの」を駆け込み購入する動きが見られますが、その後の消費の落ち込みもまた明らかです。
このような意見もあり、増税の目的や方法については慎重な検討が求められています。
増税の経済効果を長い視点で見てみると
ただ、増税が経済に与える影響は、全体的な視点でみると国にとっては決して悪くはなっていないのです。
増税の経済効果について、分析てみましょう。
- GDPへの影響 増税は短期的にGDPを押し下げる効果があります。
しかし、長期的には財政健全化を通じて経済成長につながる可能性もあります。
例えば、2014年の増税後、実質GDPは一時的に0.4%減少しましたが、その後の金融緩和政策などにより、2015年には1.2%のプラス成長に転じました。
- 雇用への影響 増税による消費の冷え込みは、一時的に雇用を減少させる可能性があります。
しかし、税収増による政府支出の拡大が新たな雇用を生み出すこともあります。
2019年の増税後、一時的に非正規雇用が減少しましたが、政府の経済対策により、2020年初頭には雇用者数が増加に転じました。
- 物価への影響 増税は直接的に物価を押し上げる効果がありますが、同時に消費の冷え込みによるデフレ圧力も生じます。これらの相反する力が、物価に複雑な影響を与えます。
2014年の増税後、消費者物価指数は一時的に2.7%上昇しましたが、その後のデフレ圧力により、上昇率は徐々に低下していきました。
- 国際競争力への影響 増税は、企業のコスト増加につながり、国際競争力を低下させる可能性があります。
しかし、同時に財政健全化は国の信用力を高め、長期的には競争力向上につながる可能性もあります。
日本の法人税率は、1990年代は50%を超えていましたが、段階的な引き下げにより現在は約30%となっています。これにより、海外企業の日本進出が促進されました。
では、私たちの生活は良くなったのか
そんなことはないですよね。
税金によってここが便利になったという実感がないからです。
中学生の「税についての作文」優秀作品集というのがあります。
これを読むと2つの思いがよぎります。
1.自分自身が税金の恩恵を受ければ感謝できる
2.このようなことを中学生に書かせて、それが優秀賞を取るなんて、政治的印象操作が甚だしい
中学生が純粋な思いでこの作文を書いているのであれば、そこは素直に称賛しましょう。
ただ、この作文を読む限り、何か「税金て素敵ですよ」といった本などをあらかじめ読まされて書かされている気がしてならないのは私だけでしょうか。
一応、気を楽にするためにこう考える
個人的なことを言うと「電気代」ってとても安いと思っていて、部屋を明るくしたり、温度を整えたり、ネットを見たりといろんなことができてあの料金なのはすごくありがたいと思います。
それって税金も絡んでいますよね。
夜道を明るい状態で歩けたり、使った水を排水したり、当たり前のことができているのは税金のおかげ。
色々不満はあれど、とりあえず自分の身の回りのことに感謝することで、気を楽にしてみてはいかがでしょうか。
いくら政治の不満をいくら言ったところで、私たちの人生には何も変化はないので時間の無駄になりそうです。